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先生や皆さんがよくして下さいました。
学習の方も、わからないことは恥ずかしがらず、その日のうちに職員室に出向いて質問し、自分が納得いくまで教えていただいたようです。高校生活はその繰り返しでしたが、本人にとっては充実した思いで深いものになりました。
親子の絆も一層深まりました。好きな絵の方に進みたいと自分で資料を取り寄せ、大阪デザイナー専門学校へと進学、そこでも普通の人の中です。専門となると皆さん他人のことなどにはかまっていません。その中を先生に尋ねに行ったり、友だちのノートを見せて頂いたりと、途中、ストレスで十二指腸潰瘍になりながら頑張り通しました。
二十歳を迎える成人式には「二十歳の主張」を代表で大勢の前で発表いたしました。主張の主旨はざっと次のようなことです。
「三歳のときから親元を離れ辛く厳しかったけれども、多くの人たちに助けられ成長し、十二年振りに帰郷し、夢にまで見た家族との生活ができて嬉しかった。両親は私を誰よりも逞しく生きるようにと手放したのを、今はとても感謝している。親にたよらず、自ら行動できるようになったし、いろんな経験もし、今は自分の好きな道を歩んでいる。できる限りの可能性を大切に伸ばしていきたい」など。会場の空気がシンと張りつめ、皆さんが一生懸命聞いて下さいました。「よくぞここまで成長してくれた」と涙で聞きました。
卒業旅行は一ヵ月間ヨーロッパに行きました。ドイツでは二十歳の誕生日会をやって頂き、また英語圏外では言葉が通じず、かえって娘の方が通訳をしたりで、皆さまにたよりにされ、

 

 

 

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